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  • Eriko Imaizumi

最近の差別訴訟について



最近の差別訴訟の上昇傾向:

このところ、差別訴訟やそれに関する係争が多くなっているように思います。

Me, Too ムーブメントの焦点はセクハラでしたが、今は「差別」の領域が社員への性的圧力から、年齢、性別、人種、障がい、性的志向、軍歴などと広がりを見せ、私のフォローしているリーガルサイトも、最近 ”Discrimination”関連だけのニュースレターを発行し始めました。


差別訴訟の分布

Me. Tooでセクハラ訴訟が一気に増加したように、DEI(Diversity, Equity, Inclusion)という言葉がが社会的地位を獲得するにつれ、差別訴訟も多くなる傾向なのかもしれません。下記は2019年のデータですが、差別訴訟の種類の分布です。(出典


"Retaliation: 39,110 (53.8 percent of all charges filed)

"Disability: 24,238 (33.4 percent)

"Race: 23,976 (33.0 percent)

"Sex: 23,532 (32.4 percent)

"Age: 15,573 (21.4 percent)

"National Origin: 7,009 (9.6 percent)

"Color: 3,415 (4.7 percent)

"Religion: 2,725 (3.7 percent)

"Equal Pay Act: 1,117 (1.5 percent)

"Genetic Information: 209 (0.3 percent)


日系企業の最近の差別訴訟

2022年3月に、オハイオ州の地方裁判所によって、日本のフジテック本社にも責任があると判断されたFujitec Americaの訴訟は、黒人の法務部エグゼクティブの給与やボーナスが、同僚の白人の社員よりも低く抑えられていた人種差別です。翌4月に団体訴訟の可能性も問われているSONY Entertainmentは、会社ぐるみで女性を登用しなかったという性差別が重大問題化しています。

ここで注目することは、どちらも日系の企業でありながら、日本人はほとんど関与していない差別訴訟だということです。ひょっとしたら、本社も現地法人も、米人の経営陣だからまさか差別訴訟は起こらないだろう、と高をくくっていたところがあったかもしれません。あるいは、米国人の経営陣だったからこそ、差別などのコンプライアンスについては熟知しているはず、こちらからコンプライアンス云々を強いらなくても、きちんとしてくれているはずだから、という遠慮もあったかもしれません。

実際、SONYはコンプライアンスについては大変注意をしている会社だと聞いていますし、20年前にロンドンで知り合った当時SONYの社員が、「たくさん勉強して守らなければならないことがあって大変」と言っていたことを思い出します。それでもこのような不祥事は起きてしまいました。



人間と差別心理

日本人は差別についてぴんと来ない人が多いと思います。最近炎上した、吉野家の役員の発言のように、どういう言葉を使うと他人が傷つくのかに鈍感な人が多いようです。これが意識が低い、という意味になります。そして、ともすると「日本には差別など無い」と明言する人さえいて、差別を感じない特権階級(特に男性)が存在するのではと思うほどです。

しかしながら、注意すべきことはアメリカ人を含め、日本より意識が高いと言われている国でも差別発言は起こり、実際に差別は起こるのです。誰も差別意識から免れているわけではありません。「本人が気づいていない差別Unconscious Bias」は、実は誰にでもあることで、意識が高い、ということは、自分の差別感覚を意識し、それをうまく隠していることに他ならないからです。


本能と差別心理

人間の本能には生きていくための競争心があります。この競争心が他人との比較になり、その比較が差別につながります。あの人よりは、あの部類の人よりは、あの国の人よりは、あの職種の人よりは、といろいろなことで自分を優位に据えることで安心感を得たいのが人間です。それによって、競争から少しの間でも離れることができると感じる人間は、だれもが差別という根深い感情を持っているのです。



米国の差別への挑戦

現在の米国は、差別という人間だれしもが持っている感覚を、本能よりも高いレベルの知性で抑えよう、とする努力を始めた国と言えます。だからこそ、教育が必要なのです。何度も何度も聞き、教育されることによってしか知性は育たず、それでしか抑えることができません。そして、企業にとって差別を見過ごしてきたという事実は、社会から重大な処罰の対象に会う時代になったのです。企業での、差別に対する意識向上の努力が注目されている時代となりました。

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