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  • Eriko Imaizumi

会社内のパワーシフト:リスク管理として今からやっておかなければならないこと


米国における企業内のパワーシフトが議論されて久しくなりました。「Me Too」、「Black lives Matter」などで今まで社会的弱者とみられていた人々が力を得、そしてパンデミックでのリモートワークを経て、会社内のパワーが経営陣から労働者にシフトを始めた、と言う大きなトレンドです。Gallup社の今年の統計によると、アメリカ人が労働組合に賛同する割合も71%と、1965年以来の高さです。

このトレンドは、労使関係の振り子が大きく労働者側に振り始めた兆候だといわれます。米国民の労働組合の賛成率が48%を付けた2010年を底として、そこから50年のサイクルが始まったと言われ、ということは今後40年余り、経営者は労働者側からの要求が増加することを覚悟しなければなりません。また、多くの州でマリワナが解禁になり、精神的なストレスを抱える人が増えており、DEI(Diversity, Equity and Inclusion)などの意識の高まりで社会的弱者への注目度が上昇しています。このような状況だと、経営者側における負担は、増える一方と言っていいのではないでしょうか。そしてそれは、今後日系企業が、人事的な紛争や、悪くすれば訴訟に巻き込まれる可能性が増加するということです。

実際には、すでに巻き込まれている企業も増加しており、女性差別で団体訴訟になっている企業、人種差別で起訴された会社、そして労働組合結成妨害の容疑を最高裁で争うという日系企業も出てきています。日系企業の中にも、労働組合が結成される企業が少しずつ増えてきました。労働組合が結成されると経営のかじ取りは更に難しくなるのは目に見えています。

それでは、このようなトレンドにあって、会社を人事的な紛争などから守るにはどうしたらいいのでしょうか。

その防御策は社内のコミュニケーションしかありません。規則や罰則をきつくしても、底流に流れる大きなトレンドを抑えることはできませんから、経営陣と従業員、上司と部下などが、丹念にコミュニケーションすることで、このような紛争を事前に防ぐことしかないのです。それでは、社内のおけるコミュニケーションとして意識的に実施した方がいいことを以下に挙げます。


1. 従業員から不満が伝えられたら、とにかくすぐに対応する

2. パフォーマンス評価を四半期ごとに行う

3. 従業員へのフィードバックやチェックインなどを頻繁に行う

4. 全従業員に研修を提供する


これらは、必然的に従業員とのコミュニケーションを増やし、会社側が従業員の考えていることを敏感に感じ取り、理解するのに役立ちます。これらはHRだけに頼っているだけでは不足なのです。

そして従業員に研修を提供することも、重要なコミュニケーションの一つです。研修を提供すると言うことは、会社側から従業員に対して、社員全体、あるいは従業員個人に、ピンポイントに環境や状況に合わせた知識やスキルを提供する、というコミュニケーションです。特に、社会的弱者への差別などが社会的に取り上げられている現在、全社員に向けて、たとえ簡単で短時間のコースだとしても、Eラーニングコースの受講を必須にすることは、この会社では差別やパワハラ、セクハラなどを絶対に許さない、と言う会社の強い思いを伝える効果的な方法になります。経営陣も含めて、社員全員に対して同一のEラーニングコースで差別教育を実施したら、それは会社からの強いメッセージになるわけです。同時に、もし紛争や訴訟が起こった場合にも、Eラーニングでの全社での受講記録は、会社側は差別を許さない意識を高めるための努力をしていた、という証拠にもなります。研修の受講記録を作ることは、将来の紛争に対する保険になるのです。

社会全体の潮流が変化する中、会社が従業員とのしっかりとした信頼関係を作るためには、今一度会社のハンドブックやポリシーを見直すことから始め、従業員とのコミュニケーションが欠かせません。従業員との会話を怖がらずに積極的にフィードバック、チェックインを行い、従業員の働きを誉め、感謝し、信頼関係を確立することが大事です。そして、経営陣も含めた全社員でのEラーニング研修を実施し、経年にわたる実績を作ることで、受講記録と言う会社の盾を作ります。そういった努力があってこそ、大きな潮流の中でも安定した労使関係が作られ、会社の業績を安定成長に結びつけることになります。

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